バイオ研究と仕事術を紹介するネットメディア 5.16 Thu

細胞内タンパク質輸送を介したシナプス機能調節メカニズムを発見

 細胞内タンパク質輸送を介したシナプス機能の調節メカニズムを発見し、その異常が記憶や学習など脳高次機能に障害を与えることを突き止めたと、大阪大や東京大の研究チームが英科学誌「Nature Communications」で発表した。

 統合失調症など精神疾患では、シナプスの形成や機能調節の異常が発症の原因の一つとされている。これまでの研究で、神経細胞で豊富に発現するタンパク質「ARHGAP33」がシナプス形成を制御していることがわかってきたが、そのメカニズムについてはよくわかっていなかった。

 研究チームは、ARHGAP33欠損マウスを作製して調べたところ、シナプス形成および機能に異常があることがわかった。また欠損マウスの脳高次機能についても、記憶の一種である作業記憶の障害や、脳の情報処理と関連するプレパルス抑制の異常がみられた。

 また、神経細胞のゴルジ体にあるARHGAP33が、神経栄養因子受容体TrkBのシナプス部位への輸送に関与することも突き止めた。

 統合失調症の患者でもシナプス形成異常や作業記憶、プレパルス抑制の異常がみられることから関連を調べたところ、ARHGAP33遺伝子座に統合失調症と関連する一塩基多型を同定した。

(via 東京大学