バイオ研究と仕事術を紹介するネットメディア 4.29 Mon

南西諸島のカメムシ腸内では、細菌との共生関係が現在も進化過程にある

カメムシの共生細菌

 南西諸島に生息するチャバネアオカメムシの腸内には、進化段階の異なるさまざまな共生細菌が共存していると、産業技術総合研究所などの研究チームが英科学誌「Nature Microbiology」で発表した。共生の起源や進化、害虫の環境適応の理解へつながると期待される。

 研究グループは、腸内共生細菌が生存に必須である農業害虫「チャバネアオカメムシ」について、北海道や本州、四国、九州などでは共生細菌は単一種であるが、一方で南西諸島では同じ集団中に複数種の共生細菌が共存することを発見した。

 南西諸島のカメムシ集団を詳しく解析したところ、(1)カメムシの外では培養できず垂直感染のみで伝達される、(2)カメムシの外で培養可能で環境中でも生存でき、垂直感染も環境獲得も起きる、(3)通常はカメムシに共生しないが実験的に感染させると潜在的な共生能力を示す――という進化段階の違うさまざまな共生細菌が共存することがわかった。

 南西諸島では、チャバネアオカメムシの腸内共生関係は日本本土のように確立されておらず、現在においてもダイナミックな進化過程にあるという。

 これまで新しい高度な共生関係が成立する具体的な過程や機構はわかっていなかったが、現在進行中の過程をとらえたことで、共生の起源や進化の理解につながり、さらに害虫の環境適応機構の理解や制御への展開も期待される。

(via 産業技術総合研究所