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イモリの再生能力の秘密が明らかに、「赤血球」が鍵となる

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イモリがもつ高い「再生能力」の秘密の一端が明らかになってきました。遺伝子の解析から赤血球が重要な役割を担っていることがわかりました。




イモリはトカゲに似た両生類で脚など身体の一部が切り取られても再び元に戻る能力をもちます。

このような再生能力は両生類であれば多くの種でみられるものですが、それは子どものころに限られます。通常は変態してからだの仕組みや形が変わり、成体となれば再生能力を失ってしまいます。

たとえばカエルであればオタマジャクシは脚を切っても元に戻ることができますが、カエルになると再生することはできません。

ところが、なぜか「イモリ」だけは変態した後でも何度もからだを再生することができます。イモリの再生能力だけは特別というわけです。いったいなぜイモリだけは特別な再生能力をもっているのでしょうか。

子どものイモリの場合、からだのあちこちに幹細胞と呼ばれるさまざまな種類の細胞に分化する能力をもつ特殊な細胞が存在します。

からだの一部が切り取られたとき、この幹細胞が傷口の近くに集まってきて筋肉や骨などの細胞に変化して再生します。このような再生過程はイモリ以外の両生類の子どもでも同じです。

ところが、大人のイモリの場合は再生の過程が異なります。子どものように傷口に幹細胞が集まってきて再生するのではなく、切断部にある細胞が変化して未成熟な細胞に変化する「脱分化」と呼ばれる現象が生じます。

そして脱分化した細胞が「再生芽」と呼ばれる細胞の塊を作り、これが骨や筋肉などに再分化して再生するわけです。イモリの再生能力はとても強力で、脚や眼のレンズ、さらには心臓までも再生することができるという。

子どもの両生類の場合は幹細胞が傷口付近に集まってきて再生が始まりますが、大人のイモリの再生ではいったい何が鍵となっているのでしょうか。

筑波大などの研究チームがイモリの遺伝子解析を行いイモリの再生能力に関係する遺伝子を探索したところ、「Newtic1」と呼ばれる遺伝子の発現が再生現象のきっかけになっていることがわかりました。

この遺伝子は大人のイモリの再生過程において発現が増加します。この遺伝子は有尾両生類が特異的にもっているそうです。

そして興味深いのは、この遺伝子が一部の成熟途中にある「赤血球」で発現するという事実です。詳細に研究したところ、再生過程で傷口付近にある赤血球がこの遺伝子を発現しながら集合体を形成して、再生芽の先端部に集まることがわかりました。

つまり、大人のイモリでは赤血球が再生過程で再生芽に作用して、再生能力の発現をコントロールしていることを示しています。

赤血球に一般的に知られている役割である「酸素運搬」のほかにも、再生能力を生み出す役割を担っているということが明らかになりました。

今後、より詳細にイモリの再生能力の秘密が解き明かされることで、ヒトの医療にも応用することにつながるかも知れません。