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サケの背骨に刻まれた「記録」から回遊ルートを解明する

サケは川で産まれたあとすぐに大航海の旅に出ます。そして大きく成長すると再びもとの川にかえってきますが、彼らはいったいどこを旅しているのか。そのルートが「背骨」に記録されているという研究についてご紹介します。




サケは川で卵から孵ると海に下り、そして4年ほどの年月をかけて北太平洋を回遊したあと、再び産まれた川に戻るという不思議な生態をもっています。

しかし回遊する詳細なルートやなぜ遠い海を旅するかについてはよくわかっていません。

そこで北海道大学などの研究グループは、「窒素同位体」に着目して回遊経路を推定する手法を確立しました。

サケ脊椎骨に記録されている、過去の同位体比履歴のイメージ

成長する魚の脊椎骨には、彼らが過去に生息していた海域におけるさまざまな同位体比の履歴が保存されています。

このうち、窒素同位対比は海域によって大きく異なるという性質があるため、その魚の骨に記録された同位対比をそれぞれの海域の同位対比と比べることで、産まれてから成長するまでに過ごした海域を推定することが可能になるというわけです。

そのため、サケが産まれてから成長してもとの川に戻ってくるまでの回遊経路を復元することができます。

サケの脊椎骨をみてみると、図にあるように中心部には古い同位対比の情報が、そして辺縁部には最近の情報が保存されています。

研究グループは、最先端の窒素同位対比分析技術を使って北太平洋の広範囲をカバーする同位対比地図を作成しました。

北太平洋における窒素安定同位体比の同位体比地図

そして、北日本の河川で採取された複数のサケの脊椎骨を成長方向に分割して、それぞれの部位における窒素同位対比を測定しました。

北太平洋の同位対比地図とサケの脊椎骨の同位対比の履歴を比較して、サケの回遊経路を推定したものが下図になります。

サケは成長するに伴って日本近海からベーリング海へと北上する回遊ルートが再現され、そして成長の最後の段階ではベーリング海東部の大陸棚に到達することがわかりました。

サケの成長における最後の段階は、彼らが性成熟する時期と一致します。つまり、海洋におけるサケの回遊は、資源がとても豊富なベーリング海大陸棚に到達して餌を得て性成熟することで終わりを迎える、つまり、この海域がサケの大回遊のゴールになっていることが考えられます。

今回の分析手法は魚の背骨に記録された窒素同位対比と海洋における同位対比とを比較する方法です。

これは、サケに限らずさまざまな種類の魚の回遊ルートを推定することにも応用することが可能です。

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