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人工再構成系で温度感受性チャネル「TRPM3」を機能解析

人工再構成系

 人工的に調製した実験装置「人工再構成系」を使って温度感受性に関わるイオンチャネルの詳細な解析に成功したと、生理学研究所の富永真琴教授らの研究グループが米科学誌「FASEB J」で発表した。

 イオンチャネルの解析では、一般的に生体から取り出した細胞を用いたり、あるいは培養した細胞に目的のイオンチャネルを強制的に発現させる方法が用いられる。しかし、これらの方法ではイオンチャネルそのものの機能を詳細に捉えることは難しい。

 今回の研究では、脂質二重膜やイオンチャネルタンパク質、イオン、水のみで構成した「人工再構成系」を用いて解析した。この実験装置は余分な成分が全くないため、実験条件のほぼ全てを自由に制御することができる。

 研究グループは、温度センサーとして機能する「TRPM3チャネル」を用いて人工再構成系を構築して機能解析を行った。

 その結果、神経ステロイドの一種「硫酸プレグネノロン」によるチャネルの活性化には脂質である「PIP2」が必要だったが、一方で高血圧治療薬として用いられる「ニフェジピン」は単独で活性化できることがわかった。

 神経ステロイドとニフェジピンはいずれもTRPM3チャネルの活性化剤として知られていたが、今回の解析から活性化メカニズムの違いがあることが示された。

 また、今回用いた人工再構成系ではTRPM3チャネルのもつ温度による活性化機構がほとんど確認されなかったことから、TRPM3が温度センサーとして機能するためには細胞や組織に存在する別の成分が必要であることも明らかになった。

(via 生理学研究所