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植物Y染色体の遺伝子地図を作成、重イオンビームによる変異体を利用

Y染色体遺伝子地図

 重イオンビームで作製した変異体を使って、ゲノム配列の決定が難しい植物Y染色体の遺伝子地図の作成に成功したと、理化学研究所の阿部知子チームリーダーらの研究グループが英科学誌「Scientific Reports」で発表した。

 植物にはおしべとめしべを別の個体につける雌雄異株植物があり、ヒトと同様にXY型の性染色体をもつものがある。

 ナデシコ科植物のヒロハノマンテマはその代表例で、Y染色体には「めしべの発達を抑制する機能(GSF)領域」と「おしべの発達を促進する機能(SPF)領域」があると考えられている。

 しかし、ヒロハノマンテマのY染色体はヒトの約10倍と巨大でゲノム決定が難しいため、性決定遺伝子の同定や性染色体の進化過程の解明は困難だった。

 研究グループは、ヒロハノマンテマに重イオンビームを照射してY染色体に変異を生じさせ、おしべとめしべを両方もつ「両性花」や、どちらももたない「無性花」などの変異体を作製した。

 これらの変異体のY染色体上の欠損遺伝子を同定し、欠損遺伝子の並び順を推定するプログラム「DelMapper(デルマッパー)」を使ってY染色体の遺伝子地図を作成した。そしてGSF領域とSPF領域を識別することに成功した。

 また、以前に作成したX染色体の地図と比較したところ、Y染色体は進化過程において遺伝子の並び順が全く逆になる巨大な逆位を起こしていたこともわかった。

(via 理化学研究所