バイオ研究と仕事術を紹介するネットメディア 4.29 Mon

がん細胞の増殖に関わる遺伝子を発見、ヒートショックプロテインの誘導に関与

IER5

 がん細胞の増殖に関わる新たな遺伝子を突き止めたと、国立がん研究センターの大木理恵子主任研究員らの研究グループが英科学誌「Scientific Reports」で発表した。がんを抑制する新たな治療薬開発につながると期待される。

 転写活性化因子「HSF1」は熱ストレスなどで活性化し、ヒートショックプロテイン(HSP)を誘導してストレスから回復する。近年、HSF1ががんの発生や悪性化にも関与することが報告されているが、そのメカニズムはわかっていなかった。

 研究グループは、これまでがん化との関連が不明だった遺伝子「IER5」の発現が腎がんや大腸がん、膵がんなどさまざまながんで上昇することを突き止めた。

 また、IER5はFSF1に結合して活性化し、ヒートショックプロテインを誘導してがん細胞の増殖につながることがわかった。

 IER5の発現を抑制するとがん細胞の増殖が抑えられ、さらにHSF1と結合できないIER5はHSF1を活性化することができないことも確認した。

 がん細胞は常に低酸素や栄養不足などのストレス下にあることから、がん細胞を保護するIER5遺伝子の機能はがん細胞の増殖や生存に重要だと考えられる。

 IER5の機能を阻害することでがんを抑制できる可能性がある。

(via 国立がん研究センター