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川崎病の発症に関わる遺伝子多型を「ORAI1」遺伝子に発見

 川崎病の発症に関わる「ORAI1」遺伝子の遺伝子多型を発見したと、理化学研究所の研究グループが米科学誌「PLOS ONE」で発表した。川崎病の病態の理解や新たな治療法の開発につながると期待される。

 川崎病は乳幼児を中心に発症する原因不明の急性熱性疾患で、日本を含め東アジアの諸国で高い罹患率が知られている。

 ほとんどが自然に治癒するが、冠動脈瘤などの合併症を生じることがあるため、原因究明と効果的な治療法の開発が急がれている。

 研究グループはこれまで、川崎病と関連する一塩基多型(SNP)を複数発見したが、川崎病が東アジア人に多い理由はわかっておらず、遺伝的背景にはまだ未解明な部分が多い。

 研究グループは、以前実施したゲノムワイド連鎖解析で川崎病との連鎖の傾向がみられた12番染色体にある「ORI1遺伝子」に着目し、日本人の川崎病患者729人、非患者1315人を対象にSNPを用いた関連解析を実施した。

 次に、関連が認められたSNPについて別の患者1813人、非患者1097人で検証を行った。

 その結果、ORAI1タンパク質のアミノ酸配列の変化に関わるSNPが川崎病と関連することがわかり、このSNPのリスク型の頻度は日本人で最も高いことが明らかになった。

 また、ORAI1タンパク質のアミノ末端の付近にある「まれな遺伝子多型(レアバリアント)」も川崎病と強く関連することがわかった。

 ORAI1タンパク質は細胞膜上のカルシウムチャネルで、川崎病の発症や重症化に関わりが深いと考えられる。

(via 理化学研究所