仕事に関係することであれ、遊びや趣味の部類に入ることであれ、なんらかのスキルを身につけるためには「苦しみもがく」プロセスを通る方が、結果的には効率がいいようです。
学習の最初は苦しむ方がよい
新しい知識や技能を身につけるための学校や教材などでは、学習者が苦労することなくスムーズに学ぶことができるように、内容や順番などがとてもよく練られています。
ところが、このような教育モデルはむしろ学習効果を下げてしまうという研究結果が発表されています。苦労して習得した知識の方が、よく身につくそうです。
学びはじめの頃は、学習者がわかりやすいように手取り足取り面倒をみて教えるよりも、まずは自力でやらせて苦労をさせた方が学習効果が上がるというわけです。
何かを学んでいくとき、全員が同じスピードで「上手く」なるわけではないですよね。何をやらせても誰よりも早く身につけてしまう器用な人はいるものです。反対にみんなよりも遅れがちなタイプの人もいます。
ところが、その後しばらくすると、むしろ学びはじめの頃になかなか上手くならなかった不器用なタイプの人の方が、器用な人たちを飛び越えているケースもあります。
一流のプロスポーツ選手たちの話で、子どもの頃は誰よりも下手くそだった、というようなこともよく聞く話です。まあ一概には言えないかも知れませんが、最初は頭を悩ませて苦しむプロセスを踏むことは重要と言えそうです。
マニュアルは見るべきではない
新しい電化製品やソフトウェアなどを手にしたとき、どのようにして使い方を身につけますか?
最初は手を付けずにマニュアルを熟読してから使い始める人、マニュアルを見ながら製品やソフトウェアの使い方を学んでいく人、あるいは、最初はまったくマニュアルを見ずにとにかく使ってみる人。
いろいろなやり方はあると思いますが、もしかすると最初はマニュアルを見ずに「とにかく使ってみる」という方法が一番よいのかも知れません。ただし、何か不具合を生じさせてしまうリスクもありますが。
いずれにしろ、何か新しいスキルを学ぶ際には最初は大いに苦しんだ方が、長期的には学習効果が高い方法になるということのようです。
語学の効果的な学習法法
語学を学ぶ際はどうでしょうか。たとえば英語の勉強に「長文読解」というものがありますね。
英文を読んで意味を読解していくわけですが、最初から分からない単語を辞書で調べながら着実に読み進めていくべきでしょうか。
「最初は苦しむ」という学習モデルを適用することを考えると、まずは意味がわからなくても最後まで読み進めるというやり方がよさそうです。
文の途中で意味がわからない単語がたくさん出てきたとしても、まずは最後まで読み進めて何となくでもよいので内容の意味を考えてみる。
辞書で調べたいという願望をとにかく抑えて、何度も読んで苦しんで自分なりに意味を推測してみてから、辞書を使うようにしてみてはどうでしょうか。
最初から安易に辞書で単語の意味を調べたりせず、最初は頭が混乱して苦しくても何とか最後まで読み進めてから最後に正しい意味を得る方が学習効果は高そうです。
数学でも同様ですね。分からないからといって、すぐに解答を見てしまわずに、解けなくてもよいので自分なりに一生懸命に考えてから正解を知った方が、解法が身につくと言えそうです。
このように、「苦しむ」のも長い学習プロセスの一部分と言えます。
そう考えると、たとえ「わからない」「できない」と苦しい思いをしたとしても、「これは効果的に習得するのに役立っているな」と感じられて、むしろ前向きになれそうですね。