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滑膜幹細胞の定期的な関節内注射で「変形性膝関節症」の進行を抑える

 滑膜幹細胞を定期的に関節内注射することで、変形性膝関節症の進行を抑えることにラットの実験で成功したと、東京医科歯科大の関矢一郎教授らの研究グループが科学誌「Osteoarthritis and Cartilage」で発表した。今後は変形性膝関節症の予防や治療を目的とした臨床研究を目指している。

 変形性膝関節症は、膝関節軟骨が摩耗や消失する加齢にともなう疾患で、国内に約850万人の患者がいるとされている。現在までに根本的な治療薬は開発されていない。

 研究グループは、変形性膝関節症を発症させたラットを使って実験した。膝関節の滑膜から培養した体性幹細胞(滑膜幹細胞)を定期的に関節内注射すると、進行を予防することができた。

 関節内に投与した細胞は急速に数が減少するため、慢性の病態である変形性膝関節症に対しては1回の投与では効果が十分でなく、定期的に投与することが有効であることが明らかになった。

 また、関節内に投与した滑膜幹細胞のほとんどは滑膜に生着し、軟骨を保護する多数の栄養因子を産生することがわかった。

(via JST