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大腸がんの腫瘍内不均一性を生む進化メカニズムを解明

 大腸がんは非常に多様な遺伝子変異をもつ不均一な細胞集団から構成されており、がん細胞の生存と無関係な遺伝子変異の蓄積による「中立進化」によって腫瘍内不均一性が生まれると、九州大の三森功士教授らの研究グループが米科学誌「PLOS Genetics」で発表した。効果的な治療戦略の基盤になると期待される。

 大腸がんは、1つの正常な大腸粘膜細胞が遺伝子変異を蓄積しながら進化して異常増殖することで発生すると考えられている。

 遺伝子変異の組み合わせは患者ごとに異なるが、同じ患者のがん細胞の中でも異なる遺伝子変異の組み合わせをもつ多くの細胞が存在する「腫瘍内不均一性」があり、治療抵抗性の一因と考えられている。

 研究グループは、9症例の大腸がんからそれぞれ5~21カ所、計75カ所の検体採取を行い、大規模な遺伝子変異解析を実施した。

 その結果、大腸がんには一塩基変異、コピー数異常、DNAメチル化などさまざまなタイプの遺伝子変異について高い腫瘍内不均一性が存在することが明らかになった。

 また、進化の前半では加齢と関連する遺伝子異常があることがわかった。

 さらに、スーパーコンピューター「京」を利用してがんの進化をシミュレーションすることで、腫瘍内不均一性が生まれる過程を解析した。

 その結果、がん細胞に有利になる遺伝子変異が選択されて蓄積する「ダーウィン的進化」より、がん細胞の生存と関係のない遺伝子変異が蓄積する「中立進化」によって生み出されていることが推測された。

(via 九州大学