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低ナトリウム血症が記憶や歩行障害を引き起こす

 血中のナトリウム濃度が低下する「慢性低ナトリウム血症」が記憶や歩行の障害を引き起こすことをラットの実験で確認したと、名古屋大の椙村益久講師らの研究グループが米腎臓学会科学誌で発表した。人間でも同様の症状が考えられ、ナトリウム濃度の測定で認知症や転倒などの予防につながる可能性があるという。

 慢性低ナトリウム血症は、心不全や肝不全などを患う高齢者に起きやすい。主にホルモン分泌の異常によって尿が体外に出ず、水がたまって血液中のナトリウム濃度が下がることで起きる。

 研究グループは、この症状を起こしたラットの行動を調べたところ、直前に見た図形を覚えていなかったり、歩行中にふらつくことがわかった。また、ラットに薬を投与して症状を改善したところ、記憶や歩行の機能が回復することも明らかになった。

 さらに、慢性低ナトリウム血症を原因として脳内に記憶障害が生じる仕組みもわかったという。

 椙村講師は「患者の血中のナトリウム濃度を測り、低い場合は認知症や歩行障害の症状が出ていないか、今まで以上に留意が必要。転倒による骨折を未然に防げる可能性もある」としている。

(via 中日新聞