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血液からゲノム異常を高精度に解析する手法を開発

血液から網羅的ゲノム解析

 血液を使った網羅的なゲノム異常の解析を高精度に行う手法を開発し、膵臓がんの遺伝子異常を検出することに成功したと、国立がん研究センターの研究グループが英科学誌「Scientific Reports」で発表した。がん治療の標的探索や、難治がんの早期診断への応用が期待される。

 がんの治療標的遺伝子異常の探索では、一般に外科的に切除した組織が用いられる。しかし生検が困難な場合があったり患者の負担が大きいなど問題があるため、血液や尿などを用いた網羅的がんゲノム解析が新しい診断法として期待される。一方、血液から得られるがん由来のDNAは極めて微量であるため、高精度に行うことは困難であった。

 研究グループは、イルミナ社の次世代シークエンサーを用いた解析を行った。既存のキットを組み合わせた新しい前処理法を開発し、得られたデータの解析でも工夫を行うことで、これまでの20分の1である10ナノグラム程度のDNA量から高精度に解析することに成功した。進行膵臓がん患者の血液からゲノム解析を行ったところ、約30%で治療標的となりうる遺伝子変異を確認したという。

 今回開発した手法は、肝臓がんに限らずあらゆる固形がんで応用が可能であり、通常の組織生検より患者負担が少ない網羅的ゲノム解析法として臨床応用が期待されるとしている。

(via 国立がん研究センター