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治療抵抗性を獲得した肺腺がん細胞を抑制するメカニズムを解明

ROR1

 肺腺がん細胞で受容体型チロシンキナーゼの一種「ROR1」を抑制すると、治療抵抗性を獲得したがん細胞の増殖が抑えられる仕組みを解明したと、名古屋大の髙橋隆教授らの研究グループが英科学誌「Nature Communications」で発表した。肺腺がんの革新的な治療法の実現につながると期待される。

 2012年に研究グループは、イレッサやタルセバなどの治療薬に抵抗性を獲得した肺腺がん細胞にROR1の抑制が有効であることを発見したが、そのメカニズムはわかっていなかった。

 研究グループは今回、肺腺がん細胞で「カベオラ」と呼ばれる50~100マイクロメートルの細胞膜の陥凹構造が形成されるのにROR1が必要なことを明らかにした。

 カベオラでは上皮成長因子受容体(EGFR)や他の受容体型チロシンキナーゼが集まり、肺腺がん細胞の生存シグナルを伝達する。

 そのため、ROR1を阻害してカベオラの形成を抑制すると、イレッサやタルセバなどに抵抗性を獲得したEGFRや、EGFRの代わりをする他の受容体型チロシンキナーゼが生存シグナルを伝達できなくなるという。

 カベオラは生理的に重要なため分子標的にはできないが、ROR1は正常な細胞ではほとんど発現されないため、このタンパク質を標的とした阻害薬の開発は肺腺がんの新しい治療法の実現につながると期待される。

(via 名古屋大学