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大きな音から内耳を保護する遺伝子を発見、「騒音性難聴」の予防に有効

 大きな音による酸化ストレス障害から内耳を保護する遺伝子を発見したと、東北大の本橋ほづみ教授らの研究グループが英科学誌「Scientific Reports」で発表した。騒音性難聴の予防につながると期待される。

 騒音性難聴は、日常生活で大きな音を聞くことで聴力低下が起こる状態。近年、内耳の酸化ストレスが主な原因であることがわかってきたが、これまでに有効な治療薬は開発されていなかった。

 研究グループは、酸化ストレスに対する防御機構で機能する転写因子「NRF2」が騒音性難聴のなりやすさに関連することを発見した。

 NRF2を欠損したマウスでは、強大音による聴力の低下が顕著になり、騒音性難聴になりやすいことがわかった。

 正常なマウスにNRF2の活性化剤を投与して強大音を聞かせたところ、聴力の低下が抑えられた。一方、強大音を聞かせた後で投与しても聴力低下は防ぐことができなかった。このことから、NRF2は騒音性難聴の予防に有効だと考えられるという。

 また、NRF2の活性化剤の投与によって内耳で生体防御に関わる遺伝子が誘導され、酸化ストレスの指標となる過酸化脂質のレベルが低下することが確認された。NRF2は、酸化ストレス障害から内耳を保護することで騒音性難聴を防いでいるという。

 研究グループは、NRF2の量と騒音性難聴のなりやすさの関係も調べた。陸上自衛隊員602人について聴力検査の結果とNRF2遺伝子の一塩基多型について調べた。

 その結果、NRF2が少なめになる人では初期症状である4000Hzの聴力低下が多くみられることが明らかになった。

(via 東北大学