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エボラウイルスは体内から本当にいなくなったのか?

エボラウイルスは潜伏している

 2013年12月から感染がはじまったエボラ出血熱。西アフリカの3カ国を中心に猛威を振るった過去最悪の流行も、ようやく終息に向けた最終段階に入っています。一方で、一度は静まったと思われたウイルスが再び再燃するなど、気になる症例が確認されているようです。いったいどういうことなのか。




 ロンドンのあるロイヤルフリー病院は14日、シエラレオネで勤務していたスコットランド人の看護師、ポーリンーカファキーさんを治療していると発表しました。彼女は9カ月前にエボラウイルスに感染しましたが、一度は回復して退院しています。ところが、「通常は起きない後天性の合併症」で再び入院しているという。

 ギニアでも、9カ月前に感染が確認された後に深刻な症状からは回復しているが、現在も背中の痛みや難聴、髄膜炎、発作など、体内にあるウイルスによるさまざまな病状に苦しんでいる患者がいるという。

 リベリアでは7月、終息宣言がなされた後にもかかわらず、17歳の少年が新たに感染して死亡しました。当時、近隣のギニアやシエラレオネで広まっていたウイルスと型が一致しないことから、リベリア国内で回復した患者のウイルスの再出現が感染源である可能性が高いとリベリア当局は発表しました。

 世界保健機関(WHO)は、エボラウイルスの最大の潜伏期間を21日間と定めています。エボラの影響がない地域として確定する基準を、最大潜伏期間の2倍である「42日間」新たな患者が出ないこととしていますが、見直すべきではないかという意見が専門家からは出始めています。

 WHOは14日付の米医学誌「The New England Journal of Medicine」で発表した論文で、エボラ出血熱の発症から9カ月が経過した男性生存者の精液に、ウイルスが残存することがあると報告しています。

 シエラレオネに住む18歳以上の男性生存者93人から精液のサンプルを採取して調べたところ、発症後2~3カ月では全員からウイルスが検出され、4~6カ月では65%、7~9カ月でも26%の生存者から検出されたという。

 実際のところ、エボラウイルスがどのくらいの期間にわたって体内に潜伏しているのかは不明です。免疫システムが及ばない眼球や脳、睾丸、精子などで数カ月間静かに潜伏したあとに出現してくる可能性があるわけです。

 一度は症状が治まったからといって、確実に体内から撃退できたとは、まったく言えないおそれがあることが明らかになってきました。

(image by UNICEF Guinea