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卵巣がんの発生にトランスフェリンが関与、DNA損傷を誘導

 卵巣がんの一種「悪性卵巣漿液性腺がん」が、卵胞液に含まれるタンパク質「トランスフェリン」が卵管上皮細胞のDNAを損傷を引き起こすことが原因の可能性があると、東北大の八重樫伸生教授らの研究グループが9日付の科学誌「Oncogene」で発表した。卵巣がんの予防や早期発見につながることが期待される。

 上皮性・間質性の卵巣がんの一つである「悪性卵巣漿液性腺がん」は卵管から発生すると考えられており、卵管上皮が卵胞液へさらされることが発がんに関与する可能性が報告されている。

 卵管上皮のDNA損傷が発がんに重要であることは過去の研究でわかっていたが、DNA損傷を引き起こす原因についてはわかっていなかった。

 研究グループは、鉄イオンが触媒する「フェントン反応」がDNA二重鎖の切断を引き起こすこと、そして鉄イオンを細胞に供給するタンパク質「トランスフェリン」が卵胞液に含まれることに着目した。

 そこでヒト卵管上皮細胞とマウス卵管組織を用いて実験したところ、トランスフェリンが細胞内に取り込まれ、その結果として細胞内でフェントン反応を誘導してDNA二重鎖切断を引き起こすことが明らかになった。

 今回の研究結果について、研究グループは「卵巣がん発生の詳細なメカニズムの解明、さらに将来の卵巣がん予防や早期発見につながることが期待される」としている。

(via 東北大