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カイコが「セリシン」を生産する仕組みを解明、有用タンパク質の大量生産に期待

 カイコが水溶性タンパク質「セリシン」を生産する仕組みを解明したと、農業生物資源研究所と北海道大の研究チームが発表した。カイコを利用した有用タンパク質の大量生産技術への応用が期待される。

 カイコがつくるマユの4分の3は糸になるフィブロインというタンパク質だが、残り4分の1はセリシンという水溶性タンパク質が占めており、絹タンパク質をつくる器官のうち中部絹糸腺で生産される。

 遺伝子組換え技術によって、コラーゲンなどの有用タンパク質をセリシンとともに中部絹糸腺で生産する技術が実用化されているが、セリシン遺伝子を調節するメカニズムが不明なため、タンパク質の生産量を向上させるのは困難だった。

 研究チームは、カイコの胚発生において働く「アンテナペディア(Antp)」というタンパク質が、セリシン遺伝子の発現に必要であることを発見した。

 そこで、後部絹糸腺でもAntp遺伝子を働かせたところ、通常は生産されない後部絹糸腺でもセリシンが生産されることがわかった。

 さらに、中部絹糸腺で合成されるセリシン以外のタンパク質も、Antpによって生産されることもわかり、Antpによって発現が調節される共通の塩基配列も突き止めた。

 今後、有用タンパク質をアンテナペディアによって強く発現させ、カイコによる有用タンパク質の生産性を向上させることが可能になると期待される。

(via 北海道大学