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アルツハイマー型認知症の神経変性の進行に「COX-1」が関与、可視化に成功

 アルツハイマー型認知症モデルマウスにおいて、神経炎症に関わる酵素「COX-1」が神経変性の進行に関与する様子を可視化することに成功したと、理化学研究所の尾上浩隆チームリーダーらの研究グループが米科学誌「The Journal of Nuclear Medicine」で発表した。

 神経変性疾患の1つであるアルツハイマー型認知症では、神経炎症が発症プロセスに強く関与すると考えられている。

 発熱や炎症の原因となる酵素「シクロオキシゲナーゼ(COX)」を抑える抗炎症薬が、アルツハイマー型認知症の予防や治療に効果がある可能性が、動物モデルや臨床研究で報告されている。しかしアルツハイマー型認知症とCOXとの関係についてはまだよくわかっていない。

 COXには、正常時にも一定量発現する「COX-1」と、免疫反応や炎症刺激で誘導される「COX-2」の2タイプがある。

 研究グループは、COX-1を高感度で検出するPETプローブを開発し、アルツハイマー型認知症モデルマウスでの加齢にともなう症状の進行とCOX-1の変化の関係を調べた。

 その結果、16~24カ月齢で有意な脳内シグナルの集積がみられた。これは組織病理学的所見で確認されたアミロイドベータプラークの増加やミクログリア活性化の増大とも一致していた。

 また、この集積は特に大脳皮質や海馬で著しく、この領域での大規模で強いアミロイドベータプラークの存在や、COX-1を発現する活性化ミクログリアがその周りを取り囲む像が観察された。

 アルツハイマー型認知症での脳内炎症の病態や進行度を評価するバイオマーカーとして、COX-1のPETイメージング技術を活用することが期待される。

参考:理化学研究所