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分裂酵母のアミノ酸取り込みを制御する物質を同定、新たな細胞間コミュニケーション機構を解明

 分裂酵母が低分子化合物を介してアミノ酸取り込みを制御する新しい細胞間コミュニケーション機構を解明したと、理化学研究所の研究グループが英科学誌「Scientific Reports」で発表した。

 生物は細胞外から窒素源を取り込むが、分裂酵母はグルタミン酸など良質な窒素源を優先的に利用するため、その存在下では利用しにくい窒素源の取り込みが抑制される「窒素源カタボライト抑制」が起こる。

 分岐鎖アミノ酸の合成に関わる遺伝子を欠損した分裂酵母「eca39Δ株」は、分岐鎖アミノ酸を外から取り込まないと生育できない。したがって、良質な窒素源を含む培地では利用しにくい窒素源である分岐鎖アミノ酸の取り込みが抑制されるため、eca39Δ株は生育できなくなる。

 しかし、同じ培地上でeca39Δ株の隣に野生株が生えているとその近傍からeca39Δ株が生えてくる「適応生育」現象が発見されたため、野生株から分泌された物質がeca39Δ株の窒素源カタボライト抑制を解除していると予想された。

 研究グループは、この活性物質を分離・同定して「NSF」と命名した。NSFは分裂酵母自身によって生産され、培地中で一定濃度に達すると生育を誘導する自己制御因子であることがわかった。

 また、適応生育に必要となるアミノ酸トランスポーターが「Agp3」であることも突き止めた。

参考:理化学研究所