酸化ストレスが神経変性を引き起こす分子メカニズムを解明したと、九州大の中別府雄作主幹教授らの研究グループが科学誌「Scientific Reports」で発表した。神経変性の新たな治療薬開発につながると期待される。
アルツハイマー病などの認知症における神経変性の原因のひとつとして、酸化ストレスが注目されている。しかし、酸化ストレスが神経変性を引き起こすメカニズムについてはよくわかっていなかった。
研究グループは、DNA塩基の主要な酸化体である「8-オキソグアニン(8-oxoG)」に着目し、そのDNAへの蓄積が神経細胞に与える影響を解析した。
ヌクレオチドプールに蓄積した8-oxo-dGTPを分解する酵素「MTH1」と、DNA中に蓄積した8-oxoGを除去する酵素「OGG1」を欠損するマウスの脳から神経細胞を取り出し、抗酸化剤の存在下と非存在下で培養して解析した。
その結果、MTH1とOGG1を欠損した神経細胞を抗酸化剤の非存在下で培養するとミトコンドリアDNAに8-oxoGが多量に蓄積して機能障害に陥り、さらに神経突起の生成が顕著に低下することがわかった。
抗酸化剤に加えてMTH1とOGG1の発現や機能亢進をもたらす化合物が神経変性の治療薬となる可能性が示された。
参考:九州大学