バイオ研究と仕事術を紹介するネットメディア 5.14 Tue

酵母の熱適応進化を大規模ゲノム解析、熱耐性因子の同定に成功

 熱ストレス下で適応進化を行い育種した酵母の全ゲノムを解析して、熱耐性を誘導する遺伝子変異を解明したと、京都大の植田充美教授らの研究グループが科学誌「Scientific Reports」で発表した。さまざまな有用物質生産への応用が期待できる。

 研究グループは、酵母「Saccharomyces cerevisiae」を32度、72時間で繰り返し育種する適応進化を行った。親株30度の生育より32度で良い生育を示した時点でさらに2度上昇させ、34度で培養した。同様の操作を繰り返して最終的に38度まで適応育種を実施した。

 各温度で適応した育種中途株をすべて解析して、変異を獲得していく経緯や特定の変異をもつ集団による他集団の淘汰を調べた。

 解析の結果、さまざまなストレス耐性を誘導する経路の上流に位置する「CDC25」遺伝子における変異が同定された。

 同定された変異を導入して再構成した株が高温下で良好な生育を示し、さらに野生株と比べてグルコースから2.5倍、ガラクトースから5.1倍のエタノールを生産することが確認された。

参考:京都大学