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内耳には霊長類特異的な遺伝子発現パターンがある

 霊長類の内耳には、マウスなど齧歯類とは異なる遺伝子発現パターンがあることをコモンマーモセットで発見したと、慶應義塾大の岡野栄之教授らの研究グループが科学誌「Scientific Reports」で発表した。遺伝性難聴における難聴メカニズムの解明や治療法開発につながると期待される。

 先天性難聴は、新生児1000人に1人の割合で生じる頻度の高い疾患で、その約半数が遺伝子異常に起因するとされている。

 これまで多くの難聴遺伝子が同定されてきたが、その一部については、遺伝子変異をもつマウスを作成しても難聴を起こさないことが報告されてきた。

 研究グループは、マウスで疾患モデルが作成できなかった原因遺伝子(CONNEXIN31、CRYM、GRHL2、DFNA5、ATP6B1)のマーモセット内耳における発現パターンを検討した。その結果、これらの遺伝子は霊長類に特徴的な発現を示すことがわかった。

 齧歯類と霊長類の内耳では類似点が多いが、一方で遺伝子の面からは大きく異なる点もあり、マウスで動物モデルを作成できない原因である可能性が示された。

参考:慶應義塾大学