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国際宇宙ステーション内部に生息する細菌群を調べた結果

ISS

国際宇宙ステーション(ISS)は地上とは異なる環境です。もしかすると地上とは違った微生物群がISS内部を浮遊している可能性があり、宇宙飛行士たちの健康への影響が懸念されます。そこで、NASAの研究チームが調査に乗り出しました。




ISSには宇宙飛行士が長期間にわたって居住しますが、微少重力や宇宙線、二酸化炭素濃度の上昇など、地上とは違う環境が形成されています。環境の変化は人間だけではなく、空気中をさまよう微生物にも影響を与えます。

米航空宇宙局(NASA)の研究チームは、ISS内部に設置された空気浄化フィルターや掃除機の袋に入っていた埃のサンプルを採取して、地球上にあるNASAのクリーンルームと比較しました。

実験では、空気中に含まれる微生物の構成を調べるため「PMA-qPCR」と呼ばれる解析法を用いています。微生物のもつリボソームRNA「16S rRNA」の塩基配列を手掛かりに、どういった微生物群が含まれているかを調べました。

解析の結果、ISSから採取されたサンプルは地球上のサンプルとは異なり、アクチノバクテリア(放射線菌)が大部分を占めているという意外な結果が明らかになりました。

アクチノバクテリアには、炎症や肌荒れを引き起こす可能性のある細菌が含まれている可能性があります。これらの細菌は土壌に生息して放射状に菌糸を出すことで知られています。なぜISS内で増殖したのでしょうか。

今回の実験は精密な微生物の分析をするものではないため、実際に有害な細菌が含まれているかどうかを確実に結論づけることができませんでした。しかし、長期滞在する宇宙飛行士たちの安全を確保するための、ISS内部の細菌群を監視するシステム構築につながる成果とはいえそうです。

Microbiomes of the dust particles collected from the International Space Station and Spacecraft Assembly Facilities

(via WIRED image by NASA’s Marshall Space Flight Center