筋ジストロフィーを発症する新たな原因を発見したと、神戸大の戸田達史教授らの研究グループが科学誌「Cell Reports」で発表した。筋ジストロフィーの治療法開発につながると期待される。
筋ジストロフィーは、筋繊維の破壊や変性と再生を繰り返しながら次第に筋萎縮や筋力低下が進行する遺伝性疾患で、国内に約2万5000人の患者がいるとされている。
これまで、福山型筋ジストロフィーや類縁疾患の発症原因として、筋細胞表面にあるタンパク質「ジストログリカン」に結合する糖鎖の異常や、「ISPD」「フクチン」「FKRP」などの遺伝子が正しく機能していないことが知られていた。しかしこれらの糖鎖や遺伝子の働きは解明されていなかった。
研究グループは、生体と同じ糖鎖を培養細胞につくらせることに成功し、糖鎖の各成分ごとの質量を測定した。
その結果、これまでバクテリアや一部の植物でしか確認されなかった「リビトールリン酸」が糖鎖の中に存在することを発見した。
また、これまで機能が不明だった原因遺伝子「ISPD」「フクチン」「FKRP」がリビトールリン酸をつくる酵素であることがわかった。
さらに、筋ジストロフィーの原因遺伝子を欠損させた患者モデル細胞ではリビトールリン酸が欠損していたこと、リビトールリン酸をつくる材料となる「CDP-リビトール」を細胞に投与すると糖鎖異常が解消されることを確認した。
参考:神戸大学