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自分の話がウケたときに起こる脳内のメカニズムが明らかに

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自分が話した内容が相手に「ウケた」とき、脳内ではどのようなメカニズムが働いているのでしょうか。ここにはお金や褒めなどにも関わる「報酬系」と呼ばれる脳内の機能が関係していました。




会話など社会的やりとりには報酬が重要

会話などの社会的なコミュニケーションでは、一方の人が情報を伝えて、もう一方の相手がその情報に対して何らかの反応を示すことで成立します。この反応が好ましいものであれば、より話をしたいと感じ、良好な社会的やりとりが成り立ちます。

このようなコミュニケーションには、誰かから褒められたりお金などの報酬を得るなどに関係する脳内の部位「線条体」が関わることが明らかになっています。良好な社会的やりとりを成立させるためには、報酬が必要というわけですね。

それでは、実際に話をした内容に対して相手の反応がよかった場合、脳内ではどのようなことが起こっているのでしょうか。この脳機能については、生理学研究所の研究グループが実験を行っています。

感覚野と内側前頭前野の信号で線条体が活動

研究では、画面に提示されている「大喜利」の回答を被験者自身がおもしろく読み上げた場合と、別の人が読み上げた場合で、観客の反応に対する脳の働きを調べる実験を行いました。

まず、大喜利の回答を自分以外の誰かが読み上げたときと比べて、自分自身が読み上げたときに観客がウケるとより嬉しいと感じる傾向があることがわかりました。

そしてこのときの脳内の活動を機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)で測定したところ、被験者自身が読み上げた方が「内側前頭前野」と呼ばれる部位が活発に活動。観客の笑い声に対しては、「聴覚野」と呼ばれる脳部位が活動しました。

そして、被験者自身が大喜利を読み上げて観客に大きくウケたときには、線条体が活動しました。

研究では、内側前頭前野と聴覚野、そして線条体の活動の関係についてより詳細に調べています。

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fMRIのデータをより詳しく調べて、生理-生理交互作用解析と呼ばれるネットワーク解析を行ったところ、内側前頭前野の活動が、聴覚野と線条体の関係性を示す「機能的結合」を変化させていることが明らかになりました。

これはつまり、聴覚野から線条体が受け取る信号に対して内側前頭前野が影響を与えて変化を生じさせていることを意味します。

このことを、「社会的やりとり」と絡めて考えてみると、以下のような図で示すことができます。

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自分が相手に話しをするという行動をとったとき、①自身の関与は、脳内では内側前頭前野の活動につながります。

これに対する相手の②反応を確認したことは聴覚野の活動につながり、これが線条体の活動によって③社会的やりとりに反映されます。

この研究では、自分がとった行動が相手に評価されるときの働きの一端が明らかになっています。社会的やりとりに関係する処理では、線条体だけではなく複数の脳領域が関与しており、それらのネットワークが影響しています。

このようなメカニズムをより詳細に明らかにしていくことで、コミュニケーションを苦手とするような疾患に対する理解が深まっていくことが期待されます。

図:生理学研究所