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睡眠を取ると記憶力が高まる海馬のメカニズムが判明する

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記憶力を高めて効率よく学習をするためには睡眠が大事だということはよく言われていますね。ではいったいなぜ睡眠が必要なのか。そこには記憶を高める「クールダウン」のメカニズムが存在することが脳の研究から明らかにされています。

記憶では多くの場合、脳内の海馬と呼ばれる領域で「長期増強」が行われています。

長期増強とはニューロンどうしのつながりが強まる現象のことですが、しかしニューロンの数には限りがあるため、当然ながらこれを無限に続けることはできません。そのため、海馬は何らかのメカニズムを利用することで記憶容量の限界を避けているはずです。

つまり、必要な記憶のみを維持して、あまり重要ではない記憶についてはニューロンのつながり度合いを避ける「クールダウン」のメカニズムがあるはずです。

そしてどうやら、海馬から発生されるある特定の脳波がこのメカニズムに関係していることがわかりました。

記憶容量のムダづかいを避けるクールダウン

東京大学の研究グループは、睡眠中のマウスを使ってニューロンのつながりの強さの指標である「興奮性後シナプス場電位」を調べました。

その結果、睡眠の経過とともにこの電位が弱まることがわかりました。つまり、睡眠中にニューロン間のつながりが自然と弱まることがわかったわけです。

次に、研究グループは睡眠中に生じる「sharp wave ripple(SWR)」と呼ばれる脳波を阻害します。すると、ニューロン間のつながりの減弱が観察されなくなるということがわかりました。

このSWRと呼ばれる脳波は、ノンレム睡眠時などにおいて海馬でよく観察される脳波です。

研究グループの実験結果は、睡眠中に海馬で発生するSWRが海馬におけるニューロンのつながりを弱める「クールダウン」を引き起こすことを示しています。

では、睡眠中のクールダウンによってすべての記憶が弱められてしまうのでしょうか。

ノイズを減らして記憶の精度を高めるメカニズム

続く実験からは、実はこの現象はすべてのニューロンに対して起こるわけではなく、眠る直前に学習した情報をコードしているニューロン群では生じないことがわかりました。

つまり、SWRは必要な情報を確保しながら不要なシナプスを弱めることで、記憶のキャパシティを確保していることがわかったわけです。

さらに、睡眠の直前に行った学習に関与したニューロンのつながりを減弱させず、記憶とは無関係なノイズ成分を減らすことで、結果的には情報の精度を高めることにもなります。言い換えれば、学習後に睡眠してSWRを発生することで、効率よく記憶が整理されるメカニズムが備わっていることにもなります。

実際、マウスの実験ではSWRを7時間にわたって阻害し続けたところ、十分な睡眠をとっているにも関わらず、マウスの脳回路は興奮性が高いままとなり、物体の位置を認識する試験では学習成績が低下することが確認されました。

試験前の勉強では徹夜をせず、十分に睡眠を取ったほうが記憶力が高まることはよく知られていることです。どうやらただ単に脳を休めるためではなく、本当に記憶を効率化できるメカニズムが脳には備わっているようです。

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