バイオ研究と仕事術を紹介するネットメディア 4.26 Fri

微生物の酵素を模倣して触媒を開発、人工光合成への応用に期待

酵素の活性中心を模倣することで高効率に二酸化炭素を一酸化炭素に還元する触媒を開発することに成功したと、筑波大などの研究チームが発表しました。人工光合成の実現に向けた光還元触媒への応用が期待されます。




光合成では、太陽光のエネルギーを利用して水と二酸化炭素から最終的にグルコースなどを生産して、光エネルギーから化学エネルギーへの変換および貯蔵を行っています。

人工的に光エネルギーを利用して二酸化炭素を有用な化合物へと変換する人工光合成システムでは、高性能な二酸化炭素還元触媒の開発が必要です。

これまでに貴金属である白金やルテニウム、レニウムなどの金属触媒が高い触媒活性をもつことがわかっています。

しかし、より安価なニッケルや鉄などを用いた金属触媒では二酸化炭素よりも先に水を還元して水素を発生させてしまうという課題がありました。

研究チームは、自然界の微生物がもつ酵素で二酸化炭素と一酸化炭素を相互変換する「一酸化炭素デヒドロゲナーゼ(CODH)」に着目しました。

CODHの活性中心は、硫黄を配意原子としてもつ鉄とニッケルのクラスターであることが知られています。

この構造をヒントにして硫黄原子を含むニッケル錯体を合成して、還元剤および光増感剤の存在下で二酸化炭素の還元反応を評価しました。

その結果、これまでに報告されたニッケル錯体よりもはるかに高い活性を示すことがわかりました。

今回開発されたニッケル触媒をベースにより安定性や活性の高い錯体触媒を開発することで、コストパフォーマンスに優れて効率的な人工光合成系の構築が可能になると期待されます。

参照情報